11.15.15:42 [PR] |
10.26.00:41 コラボさせていただきました。 |
先日ツイッターのタグで『フォロワーさんの一枚絵を小説にさせていただく』というタグに参加させていただきまして、サイトでもお世話になっておりますふきのとうさんのイラストに小説をつけさせていただきました。
大変素敵なイラストをお預かりしたものでガタブルしながらお話をつけさせていただいたのですが、これがもう大変楽しかったです!
ありがたいことにこちらにイラストも掲載許可をいただきましたので、イラストと一緒にSSをアップさせていただきます。
カプは一応次ルという前提ですがそこまで直接的な表現はないのでル次で読んで頂いても大丈夫かなと思いますが苦手な方もいらっしゃると思うので自己判断でお願いいたします。
その点ご理解いただける方は追記にございますのでご覧ください。
♪拍手ぱちぱちありがとうございます!♪
昼を過ぎて降り始めた冷たい秋雨は夕方近くなっても降り止む気配もなく、静かに音もなく降り続いていた。カーテンのように降りそぼる霧雨も、地面に落ちれば質量を持った水溜りとなって道行く人の行く手を阻む。不用意に下ろした革靴が石畳にたまった泥水をパシャリと跳ね上げ、折り目も真新しいスラックスの裾に染みを作ったのを見て、次元は小さく舌打ちをした。
街行く人々もまた同じように足元を濡らしながら諦めたような顔で傘をさして足早に通り過ぎていく。いつもは喧騒で煩い街も雨の日だけは妙に静かだ。
取り出した携帯電話。その画面に映るGPSの信号はようやくすぐ傍まで来ていた。黒い蝙蝠傘を差し直し次元は小さくため息をついた。相棒と連絡が取れなくなって既に丸一日。ようやく発信信号が拾えたのはいいが、果たしてそこに男本人がいるのかどうかは謎だ。だが、他に手立てがない以上今はとりあえず行ってみるしかない。携帯をポケットに放り込み、代わりに取り出した煙草に火をつける。ほんの少し湿気たそれはいつもより少し大きくジジッと音を立てた。
表通りから離れて裏通りへするりと入り込んだ。地元の人間でもなかなか通らないような細い路地は微かに埃と黴と下水の入り混じった匂いがした。その、一番奥。街の明かりも仄かにしか届かないような暗がりに人の気配がある。一応いつでもマグナムを抜けるように用心しながら進んでいくと、行き止まりの壁際に放置された薄汚れた木箱の山、それを背にもたれ掛るようにして、次元の探す男がぐったりと座り込んでいた。
「……ひでえ格好だなぁ」
言いたいことはたくさんあった。今まで何してたとかどこ行ってたんだとか心配かけやがって馬鹿野郎とか、昨日からずっと考えていたそんな言葉は座り込む男を見た途端に全部吹っ飛んでしまって、我ながら驚くほどにずっと冷静な声で、そんな言葉しか出てこなかった。
濡れそぼったジャケットから察するにしばらくここに居たのだろう。恐らくはGPSの発信信号が起動した頃から。満身創痍というにふさわしい程に傷だらけでボロボロな姿はルパンという男にしては珍しい。だからこそ、その痛々しさが次元には切なくて、無意識のうちに言葉を飲んだのかもしれなかった。
「…だから言ったろうが…」
やっとの思いで溜息のようにそう溢し、咥えていた煙草を水溜りに放り込んだ。ジュッと音を立てて火が消える。あの女には関わるなって。だがその言葉は、やはり寸でのところで飲み込んだ。そんなことは今この状況に置かれているルパン自身が一番よくわかっているだろうから、これ以上責めたところで何の意味もない。
「おい。何とか言えよ。生きてるか?」
次元の言葉にようやくルパンがようやくそっと顔を上げた。寒さのせいか血の気のない顔。だが、生きている。そのことに内心ほっとしながらもその思いを表に出すことはしない。今はまだ。とりあえずアジトに連れて帰って暖めなければ。このままでは遅かれ早かれ危険になるからだ。
「動けるか? 怪我は?」
次元の言葉に返る言葉はなく、ルパンは小さく頭を振った。ざっと見た感じ血の滲んでいる部分もあるが怪我自体は大したことはなさそうだ。それよりもこの雨だ。低体温の方が危険だろう。器用に傘を肩に乗せたまま己のジャケットを脱いでルパンにかけ、それからそっとしゃがみこみ背中を向けた。
「ほら。帰るぞ」
緩慢な動作の気配。そして濡れた冷たい身体が背中に預けられた。
「ちゃんと、つかまってろよ」
前に回された手をしっかりと組ませ、「よっ」と小さく掛け声をかけてルパンをおんぶして立ちあがる。これ以上ルパンが濡れないように傘の位置を少し調節してからゆっくりと歩き出した。
「…暖かい」
表通りへ出たころに耳元でか細い声がした。少しは正気に戻ったらしい。何があったのか聞く気はない。ルパンだって言いたくはないだろう。もしいつか話したい時が来たら話せばいい。気にならないといえば嘘になるが、だが今こうやって一緒に帰ることが出来るならば、それだけでよかった。背中越しに微かに感じる鼓動が、愛しい。やっとそこでルパンが生きていることを再確認して、次元はようやく無条件で安心することができた。
「次元」
またか細い声が、耳元で次元を呼んだ。前に回された腕にほんの少しだけ力が籠る。
「…なんだ?」
落ちそうになる傘を器用に肩に戻し問う。
「…ありがとな」
消えそうなほどに小さな小さな声は雨音に掻き消されながら、だが次元の耳にははっきりとそう聞こえた。
だからもう。それだけでいいと思った。
~Fin.~
絵を見た瞬間にスパーンと話が出来上がってしまいました。
ふきのさんのイラストの優しい感じとストーリー感が大好きなんです(*´ω`)
しかも今回このタグの為に描き下ろしていただいたんですよ!なんという私得!←
ふきのさん本当にありがとうございました!!
大変素敵なイラストをお預かりしたものでガタブルしながらお話をつけさせていただいたのですが、これがもう大変楽しかったです!
ありがたいことにこちらにイラストも掲載許可をいただきましたので、イラストと一緒にSSをアップさせていただきます。
カプは一応次ルという前提ですがそこまで直接的な表現はないのでル次で読んで頂いても大丈夫かなと思いますが苦手な方もいらっしゃると思うので自己判断でお願いいたします。
その点ご理解いただける方は追記にございますのでご覧ください。
♪拍手ぱちぱちありがとうございます!♪
昼を過ぎて降り始めた冷たい秋雨は夕方近くなっても降り止む気配もなく、静かに音もなく降り続いていた。カーテンのように降りそぼる霧雨も、地面に落ちれば質量を持った水溜りとなって道行く人の行く手を阻む。不用意に下ろした革靴が石畳にたまった泥水をパシャリと跳ね上げ、折り目も真新しいスラックスの裾に染みを作ったのを見て、次元は小さく舌打ちをした。
街行く人々もまた同じように足元を濡らしながら諦めたような顔で傘をさして足早に通り過ぎていく。いつもは喧騒で煩い街も雨の日だけは妙に静かだ。
取り出した携帯電話。その画面に映るGPSの信号はようやくすぐ傍まで来ていた。黒い蝙蝠傘を差し直し次元は小さくため息をついた。相棒と連絡が取れなくなって既に丸一日。ようやく発信信号が拾えたのはいいが、果たしてそこに男本人がいるのかどうかは謎だ。だが、他に手立てがない以上今はとりあえず行ってみるしかない。携帯をポケットに放り込み、代わりに取り出した煙草に火をつける。ほんの少し湿気たそれはいつもより少し大きくジジッと音を立てた。
表通りから離れて裏通りへするりと入り込んだ。地元の人間でもなかなか通らないような細い路地は微かに埃と黴と下水の入り混じった匂いがした。その、一番奥。街の明かりも仄かにしか届かないような暗がりに人の気配がある。一応いつでもマグナムを抜けるように用心しながら進んでいくと、行き止まりの壁際に放置された薄汚れた木箱の山、それを背にもたれ掛るようにして、次元の探す男がぐったりと座り込んでいた。
「……ひでえ格好だなぁ」
言いたいことはたくさんあった。今まで何してたとかどこ行ってたんだとか心配かけやがって馬鹿野郎とか、昨日からずっと考えていたそんな言葉は座り込む男を見た途端に全部吹っ飛んでしまって、我ながら驚くほどにずっと冷静な声で、そんな言葉しか出てこなかった。
濡れそぼったジャケットから察するにしばらくここに居たのだろう。恐らくはGPSの発信信号が起動した頃から。満身創痍というにふさわしい程に傷だらけでボロボロな姿はルパンという男にしては珍しい。だからこそ、その痛々しさが次元には切なくて、無意識のうちに言葉を飲んだのかもしれなかった。
「…だから言ったろうが…」
やっとの思いで溜息のようにそう溢し、咥えていた煙草を水溜りに放り込んだ。ジュッと音を立てて火が消える。あの女には関わるなって。だがその言葉は、やはり寸でのところで飲み込んだ。そんなことは今この状況に置かれているルパン自身が一番よくわかっているだろうから、これ以上責めたところで何の意味もない。
「おい。何とか言えよ。生きてるか?」
次元の言葉にようやくルパンがようやくそっと顔を上げた。寒さのせいか血の気のない顔。だが、生きている。そのことに内心ほっとしながらもその思いを表に出すことはしない。今はまだ。とりあえずアジトに連れて帰って暖めなければ。このままでは遅かれ早かれ危険になるからだ。
「動けるか? 怪我は?」
次元の言葉に返る言葉はなく、ルパンは小さく頭を振った。ざっと見た感じ血の滲んでいる部分もあるが怪我自体は大したことはなさそうだ。それよりもこの雨だ。低体温の方が危険だろう。器用に傘を肩に乗せたまま己のジャケットを脱いでルパンにかけ、それからそっとしゃがみこみ背中を向けた。
「ほら。帰るぞ」
緩慢な動作の気配。そして濡れた冷たい身体が背中に預けられた。
「ちゃんと、つかまってろよ」
前に回された手をしっかりと組ませ、「よっ」と小さく掛け声をかけてルパンをおんぶして立ちあがる。これ以上ルパンが濡れないように傘の位置を少し調節してからゆっくりと歩き出した。
「…暖かい」
表通りへ出たころに耳元でか細い声がした。少しは正気に戻ったらしい。何があったのか聞く気はない。ルパンだって言いたくはないだろう。もしいつか話したい時が来たら話せばいい。気にならないといえば嘘になるが、だが今こうやって一緒に帰ることが出来るならば、それだけでよかった。背中越しに微かに感じる鼓動が、愛しい。やっとそこでルパンが生きていることを再確認して、次元はようやく無条件で安心することができた。
「次元」
またか細い声が、耳元で次元を呼んだ。前に回された腕にほんの少しだけ力が籠る。
「…なんだ?」
落ちそうになる傘を器用に肩に戻し問う。
「…ありがとな」
消えそうなほどに小さな小さな声は雨音に掻き消されながら、だが次元の耳にははっきりとそう聞こえた。
だからもう。それだけでいいと思った。
~Fin.~
絵を見た瞬間にスパーンと話が出来上がってしまいました。
ふきのさんのイラストの優しい感じとストーリー感が大好きなんです(*´ω`)
しかも今回このタグの為に描き下ろしていただいたんですよ!なんという私得!←
ふきのさん本当にありがとうございました!!
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