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07.26.00:00 7/26 懲りない人 |
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お題:懲りない人
・ル次
・一番懲りないのは誰でしょうか
OKでしたら追記へどうぞ
「ねぇ、次元。次元ちゃんってばー」
ごろごろと甘える猫のように背後から纏わりつく声。少し鼻にかかったようなその猫なで声が、酷く俺の神経を逆撫でする。
「ねぇってばー、お願いだからこっち向いてよー」
その声を無視して俺は目の前に広げた新聞を睨みつける。何度も同じところをなぞる視線。活字なんかひとつも頭に入って来ないのに、ルパンの声から逃れるためだけに俺はただ新聞を読んでいるふりを続ける。ゆっくりと紫煙を吐き出し、そしてテーブルの上のぬるくなったコーヒーに口をつけた。
「ねぇ、次元ちゃんてばー」
何度呼ばれたところで返事なんかしてやらないし、振り返ってなんかやるもんか。
「なに怒ってんの?」
俺が怒っていることには気付いてるわけだ。理由だと? そんなもの自分の胸に聞けよ。心の中で小さく毒づく。
目の前には空になったガラスケース。つい半日前までは燦然と輝く宝石が入っていたはずのガラスケース。今は主を失ってただ空虚な姿を晒していた。それを手にした女は今頃どこの空の下にいるのだろうか。
「じげーん」
がばっと、突然首筋にルパンの腕が回る。
「…触るんじゃねぇ」
低い声で唸ってやれば、ルパンが耳元で小さく溜息をついた。
「もーホントつれないんだから次元ちゃんてば」
ルパンが動くたびに、鼻先でふわりと香水が薫る。シャネルの5番。宝石を奪い取っていったどっかの誰かさんの愛用する香水の香り。その香りが、また俺の神経を逆撫でする。
「俺が悪かったから、ね? 機嫌直せって」
「…今まで何回そう言った? 今まで何回そう言って、そのたびに不二子に騙された?」
やはり振り返りもせずに、低い声で唸るように言ってやる。気に喰わない。ああ、気に喰わないのだ。不二子に振り回されるルパンが。
「いや、だから悪かったって…」
「謝れば済むと思ってんのか?」
へらへらと笑って反省の色がまるで見えない声で俺に許しを請われたって、許せるわけもねぇだろう。俺は仏様じゃねぇ。
「毎度毎度懲りねぇ奴だな、お前は」
頭がいいくせに学習能力は皆無かと疑いたくなる。辛辣に突き放せばルパンの声がワントーン小さくなった。
「…悪かったって…でも…」
「でも、何だ」
ジロリ、と。初めてルパンを振り返った。帽子の下から睨んだ先にあるのは、ほんの少ししょぼくれたルパンの顔。ハの字に下がった眉。上目遣いにこっちを見上げてくる大きな黒い瞳。
「次元ちゃんなら許してくれるよね?」
たっぷり30秒ぐらい間を空けて。
「……今度やったらただじゃおかねぇからな」
広げた新聞に再び視線を落とし、俺は小さくつぶやいた。喉元まで出掛かったたくさんの言葉を飲み込んで、咥えた煙草の端を思いっきり噛み締める。短くなった先からスーツの上に灰が落ちた。
「あんがと♪ だから俺、次元ちゃん好きよ?」
相変わらず香水の香りをさせながらぎゅううっと抱きついてくるルパンに、俺は小さく溜息をついた。
本当に懲りないのは、目先の欲望に釣られて痛い目を見る不二子でもそんな不二子に毎回毎回騙されて獲物を横取りされるルパンでもなく、そんなルパンに甘いこの俺、なのかもしれない。
結局、次元さんはルパン様を切り捨てることなんか出来ないんです。
そしてそんなとこをルパン様も分かってるし、次元さんの方だってルパン様にばれていることを知ってるんじゃないかなぁ…
って、それをここで説明せずに書き込めよっていう話ですよね…すみません;;
読んでくださってありがとうございました!!!
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