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07.28.00:00 7/28 心霊体験 |
(お題についての詳細はこちらをご覧下さい)
お題:心霊体験
・ファミリー
・いつもよりはちょっとだけ長めです
・夏の夜といえば怪談ですよね♪
OKでしたら追記へどうぞ
「暑いー暑いー」
「あーほんとに嫌になるぜ」
夜になっても全く気温は下がらず、相変わらず蒸し暑い。だからと言ってぼやいたところで気温が下がるわけでもないのだが、言わずにおれないのがやはり人情というものだろう。
「さっきから暑い暑いと煩いぞ。おぬしらはもう少し静かに出来ぬのか」
この暑さをものともせず部屋の隅で瞑想をしていた五右ェ門が、ぼやき続けるルパンと次元に痺れを切らしたのかジロリと目を開けた。しかし睨まれた二人はは全く応えた様子もなく、むうっとへの字に口を曲げる。
「だって暑いんだもん!」
「心頭滅却すれば火もまた涼し。逆もまた然り、だ。暑いと思うから暑いのであろう!?」
「気分で暑さ寒さが調節できるんならこの世にエアコンはいらねぇよ!」
「俺らはおめぇみたいに年がら年中修行してるわけじゃねぇんだ! 暑い寒いぼやいて何が悪い!」
「もののたとえであろう。少しは我慢をしろと言っておるのだ!」
「るせー!」
全く聞く耳を持とうとしないルパンと次元。五右ェ門は大きく溜息をつき、そして何を思いついたのか突然二人ににじり寄ってきた。
「何だよ?」
「そんなに暑い暑いというのなら拙者が涼しくなる話を披露してやろうと思ってな」
そんなことを言いながらすうっと口元を引き上げる。なまじ顔立ちが整っている上に着物姿だから、妙な迫力がある。
「げっ…ヤメロよな、お前そういうのに敏感なの知ってるからさ、お前が話すとすっげーリアルなんだよ…」
実際仲間内で一番霊感があるのは五右ェ門なのだ。今までも曰くつきのお宝についてきたいろんなものを見ているらしい。
「涼しくなりたいのであろう? 夏といえば怪談は風物詩ではないか」
あからさまに顔をしかめる次元だが、言いながら蝋燭まで準備し始める五右ェ門はやる気満々のようで。
「…それとも、おぬし怖いのか?」
「あーそうそう、次元ちゃん怖がりだもんねー」
「莫迦言え俺はなぁ!」
少しばかり及び腰だった次元もそこまで言われては引けないと思ったらしい。ソファの上に改めて座りなおすとじろっと五右ェ門を睨む。
「そのかわり涼しくしろよ、絶対にな」
「わかっておる」
蝋燭にルパンのライターで火を点け、部屋の明かりを消す。それだけでなんとなく部屋の温度が下がった気がするのは気のせいだろうか。
「これは数年前、拙者がとある山奥で修行していたときの話だ…」
いつもよりさらにワントーン低い声でとつとつと五右ェ門が話し始める。
独り修行をする自分しかいないはずの山奥で人の声がする、誰そ彼(たそがれ)時に白い人影を見る、夜中に重みを感じて目を覚ます…。話そのものはどこかで聞いたことのあるような話だったが、それを話す五右ェ門の口調が上手すぎた。普段口数が多いほうではないし喋るの自体がそんなに上手いわけでもないのだが、その淡々とした語り口が怪談という話の中身にはよくあっていたのだ。始めのうちこそ好奇心に満ちた表情を垣間見せていた二人も、徐々に顔が強張りだしそのうち完全に凍り付いてしまっていた。
「…というわけでござる」
やがて話が終わったときには、確かに部屋の中は薄ら寒い空気で満ちていた。窓から入り込んだ生暖かい空気が短くなった蝋燭の炎を揺らした。
「な…なかなか涼しくなったじゃねぇか」
「そ…そだな」
二人が苦し紛れに乾いた笑いを漏らしたそのとき。
「はぁい♪」
突然部屋の明かりが点き、背後で女の声がした。
「「ぎゃぁあああああ!!??」」
思わず抱き合って飛び上がる二人。
「何よ、二人とも。こんな暗いところで何してたの? 呼んでも返事がないから勝手に入ってきちゃったわ」
「…何だ不二子ちゃんか~脅かさないでよ」
「おめーなんでこんな夜中に…!」
バクバクと跳ねる心臓をなだめすかしながら、ルパンと次元はへろへろと床にへたり込む。五右ェ門はそれを見て笑いを収めるのに必死になっていた。
「何でアタシが怒られないといけないのよ、全く。あ、それにしても五右ェ門?」
「何でござるか?」
「さっき廊下にいなかった?」
「…拙者かれこれ3時間くらいはこの部屋から出ておらぬが?」
不二子の問いに怪訝な表情を見せる五右ェ門。そしてその答えを聞いた不二子も怪訝な顔になる。
「どうしたの? 不二子ちゃん」
「いえ、さっき廊下の端にふっと白い着物姿が見えたから…てっきり五右ェ門だと思ったんだけど…」
そのまま黙り込む4人。ふっと吹いた風が蝋燭の火を消していった。
さて不二子ちゃんが見たものはなんだったんでしょうかね?
読んでくださってありがとうございました!!
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