11.16.04:18 [PR] |
08.19.00:00 8/19 ずっと待っていた |
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お題:ずっと待っていた
・次五
・しっとり…を目指しました;;
・貴方が待っていてくれるから
OKでしたら追記へどうぞ
「…よぉ」
夜中。誰もいないと思っていたアジトに入った瞬間に声を掛けられて、五右ェ門はびくりと身を竦めた。視界の先、暗闇に紛れて立つ人影がゆらりと揺れた。動く空気に交ざって届くのは嗅ぎ慣れた甘い煙草の香り。
一瞬身構えたもののすぐに力を抜いた。
「…あぁ…」
自分でも間抜けに聞こえるなんとも言えない返事を返す。静かに佇む男に、なんと声をかければいいのか分からなかった。「ただいま」でもないはずだ。現に男も「おかえり」とは言わなかった。そんな言葉をかけあうことが不自然に思えるほどに今回は長いこと離れすぎていた。
家族ではない。仲間で、そしてそれ以上の存在。それでも相容れない一線はある。だからこそさらけ出せない顔もある。そんな自分が嫌いで一方的に距離をとってみても、結局は帰ってきてしまう。ここへ。この男のもとへ。
「…何ヶ月ぶりかなぁ…? 五右ェ門…」
「…さぁ…もう三月<みつき>程になろうか…」
まるで壁越しに話しているようなぎこちなさ。玄関に立ち尽くしたまま五右ェ門は動かない。そして闇に溶けた男も動かない。
小さくライターの音がして、赤い炎が灯る。暗闇に浮かんだ赤が小さく光り、甘い香りが更に濃くなった。
「どこ、行ってた」
「…いろんなところへ」
「何、してた」
「…己を見つめなおしに…」
「見つかったか、自分」
「…分からぬ」
とつとつと掛けられる言葉に、ひとつひとつ答える。
「…すまぬ」
男に答えるうちに、なぜかその言葉が口を突いて出た。思わず言ってから顔を上げる。目の前の男の表情は闇に紛れて見えなかった。
「…謝るくらいなら連絡のひとつもしてこいよ」
その通りだと思った。
「すまぬ」
だからもう一度、言葉にした。闇の向こうで男が小さく苦笑した気がした。
「ずっと…」
ゆらりと影が動いて、煙草の火が消える。そして次の瞬間には甘い香りの黒い影に抱きすくめられていた。
「待ってたんだぜ」
肩口に埋められた顔。耳元で低い声が小さく押し殺した声で呟いた。
「たまには連絡してこい。…ただ待つのは退屈だ」
温もりが五右ェ門を包む。少し懐かしさも覚える男の匂いと煙草の香りが鼻先をくすぐった。
男にも分かっているのだ。何度こういう会話をしても五右ェ門が連絡をするわけもないということを。自分に出来るのがただ待つことだということも。男のそういう優しさに甘えている自分が心底ずるいと五右ェ門は思った。男が待ってくれていることを知っているから一時の感情に身を任せて離れることが出来る自分をずるいと思った。
「…すまぬ」
だからもう一度だけそう言って、ゆっくりと男に身を預けた。
次元さんは【待つ】ことが出来る人だとおもうんだよなぁ~という理想と願望(笑)
待つというシチュが似合うのはやはりル次よりも次五かな、と思ってこうなりました(^_^)
最後まで読んで下さってありがとうございました!!!
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