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09.20.23:58 9/20 過去に囚われることなく |
(お題についての詳細はこちらをご覧下さい)
お題:過去に囚われることなく
・次五 久々!!
・シリアス
・短め
それでもOKでしたら追記へどうぞ
「 !!」
声にならない自分の叫びで飛び起きる。"何か"に追いかけられる焦燥感は、気持ち悪いほどのリアルさで五右ェ門の中に残っていた。
「…夢…」
いつもの夢だと分かっていても、早鐘を打つ心臓と締め付けられるような頭の痛みはすぐには引いてくれない。
カーテンを開ければ外は雨。向かいのビルの毒々しいネオンの光を滲ませていた。それを見ながら小さく溜息をつく。
こんな夜によく見る夢だ。暗闇の中むせ返るほどの血の匂いが充満していて、そしてその闇の中の何かの気配からひたすら逃げる夢。その"何か"がなんなのか正体を見たことはない。いつもその前に目が覚めるのだ。だが、自分ではなんとなく予想がついていた。
不意にふわりと甘い煙草の香りが背後から漂ってきた。振り返らずとも、ともに寝ていた男が目を覚ましたのだと分かった。
「すまぬ、起こしたか」
「いいって。またあの夢だろ?」
優しい声に少しだけ動悸が治まるような気がした。
初めてその夢を見たのはまだ幼かった頃。初めて人を斬った日の夜だった。そしてしばらくは忘れていた。だがここ最近、この男達と仕事をするようになって、またあの夢を見るようになっていた。
(良心の、呵責だというのか…これが人を殺め続けてきた罰だというのか)
自嘲気味に歪めた唇から、また溜息が零れた。割り切っていたはずだった。人を斬ることに理由も意味も求めないようにしていたはずだった。だが心のどこかにそれは潜んでいたのだ。良心と言う名の、もう一人の自分。人斬りであることを選んだときに真っ先に殺めたはずの過去の自分。
ベッドの上で、微かに震える膝を抱えていた五右ェ門を背後から温もりが包んだ。
「泣くんじゃねぇよ」
「泣いてなど…おらぬ」
少し湿った声で答えれば後ろから回された腕でぎゅうっと抱きしめられた。煙草の香りに交じる、男の香り。
その暖かさに何度救われ、そしてその暖かさを何度恨んだだろう。その暖かさが殺したはずの自分を蘇らせたのだとしたら、そんなもの知らなければよかったと微かにでも思ってしまう自分の、なんと我侭なことか。
「後ろから追っかけてくる奴なんか気にするな。お前の後ろには俺が居てやるから」
優しく髪を梳きながら囁く男の腕をぎゅうと掴んだ。今の自分の幸せさを呪う、過去の己の姿が視界の隅に見えた気がした。
「五右ェ門?」
「何でも…ござらん」
いつか過去に囚われることがなくなるだろうか。いつか笑って背中を預けた男の顔を見ることが出来るようになるだろうか。
徐々に強くなっていく雨音を聞きながら、甘い香りとぬくもりの中、五右ェ門はゆっくりと目を閉じた。
こういう過去傷ネタってルパン一味の誰が主役になっても結構書き映えがするんだけど、今回は次五で。
というかしばらくずっとル次のターンだったので、次書くのは次五って決めてたんだよね(^_^)
若干ゴエが病み気味ですけどね…
最後まで読んでくださってありがとうございました!!!
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