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某泥棒三世を愛する管理人による日々語り。腐的内容を含むことがあるので、ご注意ください。
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  • 11/16/04:18

09.29.22:17

9/29 少しは心配してくれた?

365日のお題【9/29】です。
(お題についての詳細はこちらをご覧下さい)

お題:少しは心配してくれた?

・ル次
・実際は違いますが冒頭死ネタっぽい表現から入ります。苦手な方はご注意を!
・いつもよりは長めです

それでもOKでしたら追記へどうぞ


 暗く狭い地下室への階段に、硬い革靴の足音だけが耳障りなくらいに大きく響く。電気がないからと神父に手渡されたカンテラの炎が揺れる度、石壁に伸びる己の影をまるで別の生き物のようにゆらゆらと動かしていた。

 ルパン三世が死んだ。

 そのニュースは3日前に衝撃を持って全世界を駆け巡った。新聞もニュースもネットも、すべてのメディアは朝から晩までその話題で持ちきり。詳細は何一つ分からなかった。ただ公開されたのは血を流して倒れたルパンの一枚の写真。その真偽を巡って芸能人はおろか偉い学者までが真面目な顔で討論をしだす有様だ。
 馬鹿げている。
 それがニュースを知ったときの、長年ともに仕事をしてきた次元大介の正直な反応だった。
 ルパンが命を狙われているらしいことは本人から聞いていたていた。なんとかという組織がルパン暗殺に躍起になっている。だがそんな奴らにやられるようなルパンでないことは自分が一番よく知っていた。ルパンと分かれて別行動で下調べを行っていたのもそのためだ。ルパンが死ぬ、そんなことは在り得ない。世界中の誰よりもそのことを信じている次元には確信めいたものすらあったが、だがそれを頭ごなしに否定するにはあまりに情報が少なすぎた。
 だから次元は、直前までルパンと行動をともにしていたはずの女に連絡を取った。

『…本当よ』

 握りしめた受話器。電話の向こうで、不二子は硬い声で告げる。

『嘘だと思うのなら、今から言う場所にいってみればいいわ。そこにルパンは眠ってる』

 そして教えられたのがこの教会の地下室だった。

 カツン。

 硬い足音が大きな扉の前で止まった。黴と埃と独特の湿気とが交ざったにおいが鼻につく。ゆっくりと扉に手をかければ重たい扉は軋みながら次元を中に招き入れた。カンテラの光も全体には届かないような広い部屋の中央にぽつんと置かれた黒い棺。まるで吸血鬼だな。ふと、次元はそんなことを思った。
 棺に近寄りその蓋に刻まれた"Lupin the Third"の文字をそっと手でなぞる。この後に及んでもリアリティはどこにもない。そう、目の前にあるそれですら現実のものではないように思えてしまう。これを現実と受け止めるためにはあけなければならないだろう。この"禁断の箱(パンドラのはこ)"を。
 掲げていたカンテラを埃っぽい足元に置き、息を殺して棺桶の蓋に手をかける。その重さに少し顔を顰めながら押せば、小さく軋みながら開いた蓋はその中に収めた人影をあらわにしていった。
 蓋を開けきってから再びカンテラを掲げる。ゆらゆらと揺れる炎に映し出されたのは見慣れた男の顔。

「ルパン…」

 まるで眠っているかのような端正な横顔を眺めると、無意識のうちに口から名前が零れた。伸ばした手で触れた頬は冷たく、まるで人形のよう。それが以前は血の通った人間だったということさえ信じれないほどに。
 ゆっくりと身を倒してその顔をもう一度覗き込む。息がかかるほどに寄せられた次元の顔。
 ふいに。
 その次元の唇がゆっくりと笑みの形に引き上げられた。

「…起きろよ、ルパン」

 まるで寝坊した子供を起こすかのように優しく耳元で囁いた次元は、何事もなかったかのように身を離す。

「…ん」

 硬く閉じられていた瞼がふるりと震えて、死んでいるはずの男の薄目が開いた。
 薄い瞼の下から黒い瞳が現れ、焦点の定まらない視線でくるくるとあたりを見渡す。そして傍らに立つ人影に気づくと、ゆっくりと口を開いた。

「おはよ、次元」

 少し掠れた声が次元の名前を呼ぶ。聞きなれたルパンの声が耳にしっとりと馴染む。

「…何が『おはよ』だ。今じゃ世界中がお前の話題で持ちきりだぜ?」

 ポケットから取り出した赤い箱。最後の1本になっていたそれを咥えて箱を握りつぶし、次元は苦笑する。使い古したジッポの音。カンテラとは違う赤い光がその顔を照らし出すのをルパンは棺桶の中から見ていた。

「そいつは光栄だなぁ」
「ったく、死んだフリなんてしやがって。不二子もグルだろう? 俺まで騙す必要はなかったんじゃねぇか?」
「あ、ばれてた?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる?」
「…でも少しは心配してくれた?」

 生気を取り戻して黒い眼がキラキラと輝く。ルパンの台詞に絶句する次元に向かって、にやりとその表情が歪んだ。

「…誰が心配するか、馬鹿」

 意地悪なルパンの問いに、帽子を目深に被りなおしてぷいと横を向いてしまった次元。しかし、煙草の光に照らされた黒い眼が揺れるのをもちんろんルパンが見逃すはずもなかった。

「ちぇ、友達甲斐のない奴」

 拗ねたような言葉とは裏腹にくすくすと笑いながら棺桶から起き上がり、ルパンは固まった身体を解すのに猫のように大きく伸びをする。

「次元」
「何だ?」
「火ぃ貸してくんない?」

 ポケットから取り出したよれよれの煙草を咥えてルパンが請う。その煙草の先に顔を寄せ、ふたりは煙草の火をわけあった。

「…行くんだろ?」

 深々と煙を吸い込むルパンに、次元がポケットから取り出したワルサーを手渡した。

「もちろん♪ 俺様の命を狙った代償は高くつくぜ?」

 しばらく手に馴染ませてから愛銃をホルスターに吊るし、ルパンがにやりと笑う。その顔はまさに狩りに出る獣。今ならば、ルパンは死んだと思って油断している組織に壊滅的な打撃を与えることが出来るだろう。

「手伝ってくれるんだろ?」
「しょうがねぇ」

 それに答えるように次元もにやりと唇を歪め、もと来た階段をゆっくりと上りはじめた。カンテラの炎に照らされて、二つの背中がゆらゆらと揺れていた。

 



ここしばらくの365の中ではわりと納得のいくできかなぁ…
その理由はあとの記事で分かりますけど…
『なんで騙した馬鹿野郎!!』みたいなギャンギャン喚く次元さんもいいけれど、こういう夫婦な2人もいいですよね♪
それでは最後まで読んで下さってありがとうございました!!

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